なぜSalesforceは「導入しただけ」では形骸化するのか
~ViVO代表・角田が語る、真の定着化支援とAI時代の設計思想~

導入|多くの現場に携わってきたからこそ見えてきた「違和感」
これまで、どの程度の規模や社数のSalesforce導入・運用に携わってこられましたか?
正確な数値を出すことは容易ではありませんが、スタートアップから中堅企業まで、業種・規模を問わず数十社単位のプロジェクトに関与してきました。
導入初期の構築から運用フェーズ、そして最終的な定着に至るまで、あらゆるステージを俯瞰してまいりました。
市場全体を見渡した際、実際にSalesforceの「定着に成功している」と言える企業は、どの程度の割合だと感じられますか?
世の中の一般的な導入事例を俯瞰しますと、率直に申し上げて半数以上の企業様において、真の意味での定着には至っていないのが実情だと感じています。
弊社にご相談いただくケースの多くも、「自社で導入したが、半年から1年が経過してSalesforceが単に『データを入力するだけの箱』へと形骸化してしまった」という、いわば「定着の壁」に直面されている企業様です。これは導入初期の盛り上がりだけで終わってしまい、ビジネスの成果に結びついていないという、市場全体に共通して見られる非常に深刻な課題です。私たちは、まさにそうした「形骸化した仕組み」を真の資産へと変えるための支援を数多く手がけてまいりました。
なぜSalesforceは定着しないのか|失敗の構造
定着に至らない背景には、どのような共通の原因があるとお考えですか?
一言で申し上げれば、根本的な「ゴール(目的)」を見失い、目の前の「枝葉」にあたる要望をこなすことに終始してしまっているからです。
お客様からはよく「この入力項目を追加したい」「従来のExcel管理をそのまま再現したい」といったご要望をいただきますが、これらはあくまで「手段」に過ぎません。Salesforce導入の本質的な目的は、「利益が継続的に創出される構造を構築すること」にあるはずです。
手段が目的化してしまっているのですね。
その通りです。これはビジネスにおける「カーナビゲーション」に例えると分かりやすいでしょう。
真のゴールが「最短時間で特定の目的地に到着すること(=利益の最大化)」であるならば、まずその目的地を正しく設定し、最適なルートを選択することが最優先事項です。しかし、多くの現場では「カーナビの操作方法を覚えること」や「最新の機能を使いこなすこと」そのものに終始してしまいます。
本来の目的を忘れ、ツールの習熟がゴールになってしまっていると。
はい。目的地が曖昧なままでは、どれほど高性能なナビゲーションシステムを搭載しても、期待した成果(到着)は得られません。本来であれば、全体の工程から逆算して「現在の渋滞状況なら、このルートは避けて、あちらの道へリソースを割くべきだ」といった戦略的な判断が必要です。
私たちは、単に「操作方法」を教えるのではなく、お客様のビジネスが最短距離でゴールに到達するための「伴走するナビゲーター」でありたいと考えています。
ゴールを見失わないために、最も重要な要素は何でしょうか?
企業としての明確な「意思」と「設計思想」です。これらが欠如していると、現場担当者は「なぜこの入力作業が必要なのか」という意義を見出せなくなり、作業が義務化してしまいます。
その結果、データは散在し、背景にある「文脈(コンテキスト)」が失われます。経営層がそのデータを見ても現状を正しく把握できず、意思決定に活用されないという負のループに陥るのです。この連鎖を断ち切るためには、「意味のあるデータ構造」を再定義することが何より肝要です。
真の「Salesforce定着化」の定義
ViVOが考える、本当の意味での「定着」とはどのような状態を指しますか?
ViVOにおける定義は極めて明確です。 単にシステムにデータが蓄積されているだけでは不十分です。
「蓄積されたデータに基づきKPIが可視化され、ビジネスのボトルネックが特定されていること。
そして、その数値を基に会議が設計され、PDCAサイクルが正常に機能している状態」。
ここまで到達して初めて、私たちは「定着した」と定義しています。
管理職や現場の「行動変容」が伴って初めて、価値が生まれるということですね。
管理職がデータを見て次の一手を意思決定し、現場がその数字を改善するために自律的に動きを変える。
ViVOは現場の変革を通じて、システムが組織の「OS(基盤)」として機能する状態を目指しています。
ViVOによる定着化支援の具体的内容
実際に支援を開始する際、まず何から着手されるのでしょうか?
当初のヒアリングでは「枝葉の要望」を数多くいただくことが一般的ですが、私たちは安易にそれを受け入れることはいたしません。
まずは、「どのKPIを回せば、貴社のビジネスは前進するのか」というビジネス構造の整理から着手します。
Salesforceの設定変更を行う前に、徹底した「ビジネス要件の定義」を行うイメージです。
クライアントの要望を鵜呑みにするのではなく、本質を突くのですね。
「何を作りたいか」ではなく「何を達成したいか」から逆算します。
そのために真に必要な項目のみを厳選し、日々の業務プロセスに落とし込む。この工程を最重視しています。
現場の入力負担については、どのように配慮されていますか?
入力作業の自動化による負荷低減は大前提です。
しかしそれ以上に重要なのは、「入力したデータが現場へどのようにフィードバックされ、自分たちの武器になるのか」という仕組みをセットで構築することです。
現場がデータ入力のメリットを実感できて初めて、情報の精度と鮮度は維持されるようになります。
AIファーストの時代における「データ構造化」の価値
生成AIの普及により、システム構築のハードルが下がっています。この変化をどう捉えていますか?
AIを活用し、プログラミング知識がなくても迅速にシステムを形にできる時代が到来しています。
しかし、懸念されるのは「一貫性のないシステムの乱立」です。目的のないままAIによる実装を進めると、経営判断には活用できない「技術的負債」が蓄積される結果となります。
だからこそ、経営思想に基づいた「実装ガイドライン」の策定が不可欠です。
AI時代において、ViVOの役割はどう進化していくのでしょうか。
極論を言えば、コードを書く作業自体はAIやお客様自身が担ってよいと考えています。
ViVOが担うべきは、アーキテクチャの設計、テスト戦略、品質基準の策定といった「監督官(監理)」の役割です。建設業界に例えるならば、施工そのものではなく「設計事務所」や「施工管理」の立ち位置へとシフトしていきます。
クライアントがAIを正しく使いこなすための、専門家集団となるわけですね。
AIが生成したコードの整合性をチェックするガイドラインの策定や、AIを活用した効率的な開発ワークフローの設計など、お客様がAIを最大限に活用するための「仕組み」を構築する側に回ります。
「AIに仕事が奪われる」のではなく、「AIを使いこなす専門家」としてお客様のビジネス価値を加速させる。
それがViVOの目指す次世代の姿です。
支援の先にある「内製化」と理想の姿
最終的に、クライアント企業にはどのような姿になってほしいとお考えですか?
最終的には「自走(内製化)」していただくことを理想としています。
私たちの目的はSalesforceを使っていただくことそのものではありません。
テクノロジーという武器を使いこなし、お客様が掲げるビジョンを最短距離で達成していただくこと。
それこそが、ViVOの存在意義であると考えております。
まとめ|Salesforceの活用に悩む企業様へ
最後に、Salesforceの活用に悩んでいる方々へメッセージをお願いします。
現在、Salesforceの運用に課題を感じておられるのであれば、まずはシステムを触る前に、「ビジネスのKPI」を再確認することをお勧めいたします。
多くの場合、課題の本質はツールではなく、ビジネス構造の歪みにあります。
AI時代を勝ち抜くためには、以下の3点が定着への最短ルートとなります。
- 最大化すべきKPIを明確に定義する
- AIが解釈可能な、整合性の取れたデータ構造を構築する
- データが意思決定に直結するフィードバックループを作る
これからのシステムは、単なる「記録の箱」から、AIに問いかければ即座に状況が把握できる「組織の頭脳」へと進化します。
皆様が抱く情熱やビジョンを汲み取り、テクノロジーという形へ翻訳する。
このプロセスには、人間による深い洞察と伴走が不可欠です。
定着の壁を乗り越え、次世代のビジネス基盤を共に構築していきましょう。