FDE / FIELD NOTES
要望をその日のうちに本番へ反映する、ViVOの作り方
改善の打ち合わせで出た要望6点のうち4点を、その日のうちに本番へ反映した。ヒアリングの最中に見つけた業務を、40〜50分で動くアプリにしてその場で渡した。現場から「夢のようなことが実現化している」という言葉をいただくまでに、ViVOがやっていたことの記録。
「ちゃんとしたもの」を見せるために何週間も待ってもらうのと、荒削りでも今日見せるのと、どちらが会社を変えるのか。
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社名はイニシャルで記載しています。お客様の言葉は、メッセージ・議事録・報告資料の原文です。
FDE(Forward Deployed Engineer)とは、顧客の業務現場に入り、AIエージェントや業務アプリを設計・実装し、PoCから本番運用・改善までを担うエンジニアリング手法/役割です。ViVOでは、AI時代の業務アプリでは「新しい画面を作ること」以上に、「人が操作しなくても済む業務を増やすこと」が重要になると考えています。
この記事で書く「要望をその日のうちに本番へ反映する」とは、動くものを先に見せ、現場の要望をその場で聞き、その日のうちに直して、翌朝には現場がそのまま使える状態に戻しておく進め方です。ViVOは、完成品を何週間もかけて作ってから見せるのではなく、動くものを数日で出し、見せて直す往復を短くすることを優先しています。
仕立て屋にたとえると、採寸して1ヶ月後に完成品を渡す店と、仮縫いの状態で一度着てもらい、その場で袖丈を直す店の違いです。体に合った服が早く手に入るのは、後者です。業務アプリも同じで、使う人が触ってはじめて、本当に直すべき場所が分かります。
2026年9月17日。建設会社様で、現場のご担当の方と、水道メーターの現場作業に使うアプリの改善の打ち合わせをしました。出た修正要望は6点。担当エンジニアは、スマートフォン対応とアカウントの分離を除く4点を、その日のうちに直して本番に反映しました。
同じ日に、担当エンジニアへこんなメッセージが届きました。
「本当にいつも迅速に対応してくださりありがとうございます。感謝しかないですし、これをもっと活用したいと思います。夢のようなことが実現化してることが本当に嬉しいです」
建設会社様 現場のご担当の方から、ViVOの担当エンジニアへ
担当エンジニアは、こう返しています。
「質の高いFB→修正のサイクルスピード感がここまで実用的なアプリ作成につながっていると思います」
ViVO 担当エンジニアから、建設会社様のご担当の方へ
この日の午後には、同じ会社の幹部会(経営層10名)でこのアプリの実績を報告し、原価管理の仕組みを全現場に広げる方向が固まりました(記事#1)。現場の「嬉しい」と経営の判断が、同じ日に動いています。
この記事では、なぜ要望をその日のうちに本番へ反映できるのかを、建設会社様の7月から10月までの記録と、メーカー様での逆の経験から書いていきます。
速さは才能ではなく、往復の設計。私たちは「見せて直す」の往復を、その日のうちに回る形で作っている。
経営の課題:水道メーターの現場作業では、毎日、どの家をどの順で回るかのリストと地図を人が作っていました。経営としては、工事ごとの原価と粗利をつかめる仕組みを進めたい。一方で現場は、この段取りの手作業に毎日追われていました。
ViVOが入った範囲:担当エンジニアが現場と経営企画室に通い、ヒアリングと実装を繰り返しています。現場のアプリは、次のような順で育ってきました。
変わったこと:リスト作りは月20時間・6人から、月4時間・2人になりました。現場から会社に戻る時刻は、以前の16時〜16時15分ごろから15時4分になりました(3班・5日間の実測平均)。
「地図出しをするのが本当に嫌でした。もうリストを作ってくれるって最高だね、それがあるだけで全然違う」
建設会社様 現場のご担当の方
経営の判断・次に広がったこと:10月6日、社長と、このアプリを同社の外部へ販売していく方向で合意しました。営業は社長が担い、システムの実装はViVOが担います。社長からは「営業は任してください」という言葉をいただいています。現場のための小さなアプリが、3ヶ月で、会社の新しい商材になりました。
9月17日は、もう一つの出来事がありました。担当エンジニアは、建設会社様の経営企画室で業務のヒアリングをしていました。会計ソフトへの入力、グループ会社の書類管理、グループ会社の集金業務の集計。その中で、集金業務の集計はアプリにすれば解消できそうだと判断し、その場で40〜50分かけてプロトタイプを作り、経営企画室のご担当の方にお渡ししました。
「早速のご対応ありがとうございます。今、確認した限りでとても良くできています。(中略)大変、助かります。」
建設会社様 経営企画室のご担当の方
気になる点として挙がったタイ語の表示と、現金以外の支払い方法が反映されない不具合は、その日のうちに直しています。必須項目や選択の方式、最低保証額の基準といった業務のルールは、現場のスタッフとグループ会社の社長の意見を踏まえて、改めて回答をいただくことになりました。ここは、エンジニアが決めることではないからです。
担当エンジニアは、この日のことをこう振り返っています。ヒアリング中の業務を40〜50分でアプリにして即日提供できたのは、現場のアプリと原価管理の仕組みを日々自分で触ってきたことで、作る時間と、どう作ればよいかの見通しが立つようになったから。見積もりの精度が上がった感覚に近い、と。そして次の行動を決めています。
「ヒアリングした業務の中で「アプリ化すれば解消できそうなもの」を見つけた時点で、その場でプロトタイプを作って渡す。」
ViVO 担当エンジニア(その日の振り返り)
担当エンジニアは、速さの理由を自分の腕には置いていません。
「デモを見せる→その場で要望が出る→即日直す、というループが回っているからスピードが出ており、その実績が幹部会での評価につながった。」
ViVO 担当エンジニア(その日の振り返り)
現場のご担当の方がフィードバックを出すのが速いから、直すのも速くなる。このことを、担当エンジニアはこう書いています。
「お客様側のFB速度がこちらの改善速度を規定しているという構造は、今後の業務改善やアプリ化を進める上での理想形だと思う。ただ、全現場展開ではこのループがそのまま再現できるとは限らない。」
ViVO 担当エンジニア(その日の振り返り)
この往復を、私たちは偶然に任せていません。進め方として決めていることがあります。
AIでコードを書く道具(ViVOではClaude Codeを使っています)で、作る時間そのものが短くなったことは前提です。ただ、速さの本体は道具ではありません。見せて、聞いて、直して、翌朝には使える状態に戻しておく。この往復をその日のうちに回る形で設計していることが、本体です。
逆の経験も書いておきます。私たちがうまくいかなかった側です。メーカー様の社内マニュアルのAI検索(記事#1)では、最初のヒアリングで想定されたすべての要件を入れた複雑な構成で作り始めました。見せるのが遅れ、要件を見直して(対象を絞る、回答は簡潔にする)、設計を引き算してからやり直しています。担当エンジニアは、8月の振り返りにこう書きました。
「初期ヒアリングの段階で想定されるすべての要件を網羅した複雑なアーキテクチャを組むのではなく、まずは最小限の機能(MVP)を最速で構築し、実運用に近い環境で検証してもらうプロセスを挟むことが手戻りを防ぐ立ち回りが必要だなと思った。」
ViVO 担当エンジニア(振り返り)
その後、同じテーマで進め方を変えています。8月5日の夜に精度8割程度の簡易版を作り、翌6日にはお客様にデモの動画を共有しました。お客様のご担当の方からは、曖昧な質問のときは「どんなことを聞きたいか」を提案してあげると精度が上がりそうだ、という具体的な反応がその日のうちに返ってきています。9月の振り返りで、担当エンジニアはこう書いています。
「荒削り(プロトタイプ)であっても最速で顧客の手に触れさせ、実地でのフィードバックをベースに修正していくMVP型の開発サイクルを回す方が、結果的に顧客要件とのズレを防ぎ、提供価値を最大化できる」
ViVO 担当エンジニア(振り返り)
営業のダッシュボードでは、最初から翌日で回しました。8月19日の打ち合わせで出た内容を、翌20日にダッシュボードへ反映して共有すると、役員の方からその日のうちに返事が届きました。
「追加タブの中身が素晴らしいです。大変参考になる内容になっています。」
メーカー様 役員の方
8月26日には、午後1時55分に出た「年度の進捗を昨年と比べて見たい」という依頼を、午後3時32分には反映して共有しています。
10月のメーカー様との振り返りでは、スコープ(やることの範囲)を決めるヒアリングが遅れると、後からテーマの変更やずれが出る、という課題が議論になりました。私たちが出した答えは、最初に出すものを最小限にし、運用と保守を前提にフェーズを分けて、まず本番に出すこと。この振り返りをもとに、FDEプロジェクトの進め方を型にする作業を始めています。
私たちが建設会社様とメーカー様で2026年7月から10月にかけて実際にやってきたことから、経営者が明日から動けることを3つにまとめます。
本番は止まることがあります。建設会社様でも、9月28日と10月6日に本番障害が起きました。どちらも当日に復旧しています。「止まらない」ではなく「止まったらその日に直す」まで含めて頼むのが、現実的です。
冒頭で挙げた5つを、事実とともに振り返ります。
1. 速さは、作る側の腕だけで決まらない。 担当エンジニア自身が、速さの理由を「デモを見せる→その場で要望が出る→即日直す」の往復に置いています。現場のご担当の方のフィードバックが速いから、直すのも速い。
2. 荒削りでも、先に動くものを見せる。 7月の試作に「すごいですね!!」、検討開始の翌日に動くアプリ、ヒアリング中の40〜50分のプロトタイプに「とても良くできています」。逆に、想定要件を全部入れた設計で始めたテーマは、見せるのが遅れました。
3. 直すのは機能だけではない。 本番障害は当日に復旧する。要望にそのまま従わず、リスクを示して代替案で合意する。
4. その日に直せるものと、そうでないものを分ける。 6点のうち4点は即日、2点は後続。線引きを隠さないから、次の要望が出てきます。
5. 小さな「その日」の積み重ねが、経営の判断を動かす。 7月23日の試作が、9月17日の幹部会の評価になり、10月6日には他社へ販売する合意になりました。
見せて、聞いて、直して、翌朝には使える状態に戻しておく。この往復をその日のうちに回る形で作っているから、現場から「夢のような」という言葉が出て、経営が次の判断に進む。それがViVOのFDEです。
本記事の事例は、ViVOが2026年7月から10月にかけてFDEとして支援した建設会社様とメーカー様の記録です。社名・個人名・製品名は伏せています。お客様と担当エンジニアの言葉は、メッセージ・日報・振り返り・報告資料の原文から引用しました。会議の自動文字起こしに基づく発言は、間接話法で書いています。数値は各社の記録で確認したものに限っています。削減効果の時間は試算です。参照日:2026年10月20日。
本記事は、ViVOがFDEとして支援した現場の記録と、そこから導いた私の考察です。各社の成果や効果を第三者が検証したものではありません。
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