FDE / FIELD NOTES
建設・製造・教育・人材の4社で、作ったものと変わったこと
経営者の「困っている」から始まり、現場の毎日の作業と、経営の意思決定が同時に変わった。4社の記録から、ViVOのFDEが生んでいる価値を書き残す。
AIを「作れる」ことと、AIで「会社が変わる」ことの間を、誰が埋めるのか。
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社名はイニシャルで記載しています。お客様の言葉は、メッセージ・議事録・報告資料の原文です。
FDE(Forward Deployed Engineer)とは、顧客の業務現場に入り、AIエージェントや業務アプリを設計・実装し、PoCから本番運用・改善までを担うエンジニアリング手法/役割です。ViVOでは、AI時代の業務アプリでは「新しい画面を作ること」以上に、「人が操作しなくても済む業務を増やすこと」が重要になると考えています。
ある建設会社の幹部会で、ひとつのアプリの実績を報告しました。水道メーターの現場作業に使う、訪問先のリストと地図を自動で作るアプリです。毎月20時間・6人がかりだったリスト作りは、4時間・2人で回るようになりました。現場から会社に戻る時刻は、1班あたり約1時間早くなりました。
報告を聞いた部長は、あとでこう話してくれました。
「検満の実績報告でほぼ決まりだった」
建設業NK社 部長(幹部会のあとで)
決まったのは、原価と粗利を管理する仕組みを全ての現場に広げることです。社長は「今やらなければ2年後も変わらない」と、その場で後押ししました。現場で使われる小さなアプリの成果が、会社全体の経営の仕組みを前に進めたのです。
FDEという言葉は、日本でも急に聞くようになりました。OpenAIは東京でFDEを募集し、その役割を「最初のプロトタイプから安定した本番運用まで」技術的な提供を担うものとしています。[1] Salesforceも2026年6月、パートナーとAgentforceの実装を進める「FDE Partner Network」を日本で本格展開しました。[2]
ViVOは、SalesforceがFDE Partner Networkを日本で展開する半年以上前から、建設・製造・教育・人材の4社で、FDEとして業務の中に入ってきました。この記事では、まず4社に共通して見えてきた7つのことを先に示し、そのあと1社ずつ、何を作り、何が変わったのかを書きます。
ViVOのFDEは、経営の数字と現場の毎日の作業を、同じチームが、日単位で変えている。だから、作ったものが使われ、会社の意思決定まで動く。
経営の課題:工事ごとの原価と粗利を、経営が正しくつかめる状態にしたい。一方で現場は、日報や書類、訪問先の段取りといった手作業に追われていました。
ViVOが入った範囲:2025年12月に契約し、翌1月から、原価管理・実行予算・キャッシュフローを一元化する仕組みづくり、現場の作業アプリ、入札の分析、経営企画室の業務のマニュアル化など、5つのテーマを同時に進めています。担当エンジニアが現場と経営企画室に通い、ヒアリングと実装を繰り返してきました。
作ったもの:
変わったこと:
現場の担当の方は、こう話してくれました。
「地図出しをするのが本当に嫌でした。もうリストを作ってくれるって最高だね、それがあるだけで全然違う」
建設業NK社 現場のご担当の方
別の日には、担当エンジニアに次のメッセージが届いています。
「本当にいつも迅速に対応してくださりありがとうございます。感謝しかないですし、これをもっと活用したいと思います。夢のようなことが実現化してることが本当に嬉しいです」
建設業NK社 現場のご担当の方から、ViVOの担当エンジニアへ
そして9月の幹部会(経営層10名)で、このアプリの実績を先に報告し、そのうえで原価管理の仕組みの全現場への展開を諮りました。社長の「今やらなければ2年後も変わらない」という後押しで、全現場に広げる方向で一致しています。同じ幹部会で社長は、粗利率が約40%から50%台へ改善傾向にあることにも触れました。
次に広がったこと:社長からは、入札の予定価格や落札率を過去のデータからAIで予測できないか、という新しい相談をいただいています。
粗利率の改善は社長の発言です。ViVOの取り組みだけの成果と言い切れるものではありません。
経営の課題:始まりは、社長からの1本の連絡でした。
「取り急ぎ困っている案件まとまったので明日オンラインで時間いただけませんか」
製造業M社 社長
翌日、社長は全社員に「面倒くさい・大変な業務」を1人3つ以上書き出すよう依頼し、こう呼びかけました。
「良い機会ですので、業務の洗い出しを行って業務負担の削減し新たな挑戦につなげましょう」
製造業M社 社長
役員の方は、このプロジェクトの目的を「AIの導入によって業務が楽になるという成功体験を社員に体感させること」と定めました。最初から100%の自動化を狙わず、まずは30%の業務削減や「ワンクリック手間が減る」ところから始める。この方針で、2026年6月に動き出しています。
作ったもの:
変わったこと:
提出書類の自動作成を受け取った総務の担当の方からは、こんな言葉が届きました。
「おかげさまで業務効率が上がりそうで言葉で感謝を言い尽くせない限りです。25日までの間に自分の手でツールを動かしてみてフィードバックできるようにいたします」
製造業M社 総務のご担当の方
実はこの方は、最初の業務の洗い出しで、提出書類の作成を大変な業務に挙げつつ、「現状自分で作業効率化・省力化を進めているので、急ぎで対応していただきたいものはありません」と書き添えていました。社長の呼びかけがなければ、始まらなかった改善です。
次に広がったこと:営業の分析結果を見た役員の方は、「素晴らしい分析結果です。これがAIで一発で出せるのであればお金になります」と語り、他の事業部の責任者やマーケティングの責任者への展開を自ら申し出てくださいました。ダッシュボードには、マーケティングとリードの流入経路のタブが加わっています。
経営の課題:フランチャイズを含む教室網を広げていくにあたり、金融機関に説明できる中期経営計画と、それを支える正しい数字が必要でした。社長は着手にあたって「大胆に進めたい」と語っています。
ViVOが入った範囲:2026年5月の教室の分析から始まり、市場環境の分析、事業別の管理会計、中期経営計画、店舗の集客、お問い合わせ対応のAIへと、経営の上流から現場の接点までを順につないでいます。
作ったもの・変わったこと:
経営の判断:数字が見えたことで、社長の判断が次々に具体化しています。直営店の数字の管理は、現場の全員に求めるのではなく、新たに採用する直営事業部長に担わせると決めました。全店舗の集客対策は、「オーナー様の多くは手が回らない・やり方が分からない」として、本部の費用負担で約200店舗に一斉に導入することを決め、1週間ほどで契約まで進みました。フランチャイズのオーナーからの問い合わせ対応は、年内のAI化を目標に動き始めています。
経営の課題:営業(企業担当)とキャリアアドバイザーの成果を上げたい。ただ、何が成果を分けているのかが、感覚でしか語られていませんでした。
ViVOが入った範囲:2025年11月から、Salesforceでの営業・キャリアアドバイザーの仕組みづくりと、データに基づく改善に入っています。四半期ごとの契約は、3期続けて更新されています。範囲は、管理部門やオペレーション部門の業務にも広がりました。
分析で分かったこと:
作ったもの・変わったこと:分析で分かった判断の基準を、Salesforceの判定ロジックとして本番に組み込み、入力内容を自動で確かめる仕組みも検証を進めています。面談のメモから12の項目を自動で更新する仕組みも設計しています。管理部門では入社手続きの電子化や振込業務のまとめ処理を進め、オペレーション部門では、社長と話し合ったうえで、業務を型にしてアルバイトの方へ移す方針が決まりました。
冒頭で挙げた7つを、4社の事実とともに振り返ります。
1. 経営者の「困っている」から始まっていた。 4社とも、出発点は現場の要望ではなく、経営者の意思でした。M社の社長の連絡、NK社の社長の「今やらなければ2年後も変わらない」、E社の社長の「大胆に進めたい」。旗を振る人がいるプロジェクトは、本番まで進みます。
2. 経営の課題と、現場の「楽になった」を、同じ仕組みで結んでいた。 「新規契約10件で100万円」には動けても、「会社の利益が10%改善して100万円」には動きにくい。現場の皆さんほど目の前の仕事に向き合っているので、会社の利益のために動く理由は弱くなりがちです。NK社では、現場の1時間を生んだアプリの実績が、原価管理の全社展開の後押しになりました。経営のメリットと現場のメリットが1つの仕組みで結びついたとき、プロジェクトは前に進みます。
3. 作る前に、見えていなかったものを数字で示していた。 画面上では0.9%の差し戻しが、実は8.5%あった(M社)。売上データの66.9%に担当者がいなかった(M社)。上位52社で承諾の約70.4%を占めていた(N社)。営業利益を帳票と1円単位で合わせた(E社)。数字が見えると、経営者はすぐに判断を変えます。
4. 日単位で作って、日単位で直していた。 検討を始めた翌日に本番へ出す。要望の6点のうち4点をその日に直す。ヒアリング中に40〜50分で試作品を作る。担当エンジニアは、お客様への返信にこう書いています。「質の高いFB→修正のサイクルスピード感がここまで実用的なアプリ作成につながっていると思います」。速さを決めるのは、作る側だけでなく、見せて直す往復の短さです。
5. 100%の自動化を狙わず、ワンクリックから始めていた。 最初の成果を小さく早く出すことで、現場に「楽になった」という実感が生まれ、次の改善の要望が現場から上がるようになります。
6. 経営の判断が変わっていた。 全現場への展開(NK社)、データに基づく管理体制への移行(M社)、直営事業部長の採用と全店舗への一斉導入(E社)、業務の型化と移管(N社)。FDEの成果は、アプリの完成ではなく、会社の意思決定が変わることでした。
7. 作って終わらず、次の業務へ広がっていた。 教室の分析から中期経営計画、管理会計、集客、問い合わせのAIへ(E社)。業務の洗い出しから、マニュアル、営業ダッシュボード、マーケティングへ(M社)。現場に入っているからこそ、次に効く一手が見えます。
私たちはこの繰り返しを、ViVO Forward Deployed Loopという進め方として整理しています。現場を見る(Observe)、人の操作を分解する(Decompose)、AIに任せる部分を作る(Build)、実データで確かめる(Evaluate)、本番の業務につなぐ(Deploy)、共通の部品にする(Productize)。次の記事では、この6つの段階を、4社の実例とともに解説します。
AIを作れることと、AIで会社が変わることの間を、経営と現場の両側から埋める。それがViVOのFDEです。
本記事の事例は、ViVOが2025年11月から2026年9月にかけてFDEとして支援した4社(建設・製造・教育・人材)の記録です。社名・個人名・製品名は伏せ、社名はイニシャルで記載しています。お客様と担当エンジニアの言葉は、メッセージ・議事録・報告資料の原文から引用しました。数値は各社の記録で確認したものに限っています。削減効果の金額は試算です。参照日:2026年9月25日。
本記事は、ViVOがFDEとして支援した現場の記録と、そこから導いた筆者の考察です。各社の成果や効果を第三者が検証したものではありません。
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